7月29日、日本でも正式にα7sⅢ(α7s3)が発表されました。5年ぶりとなるリニューアル機の登場を待ちわびていた方も多いと思います。
α7シリーズの中でも「s」がつくこのシリーズ。そもそもこの「s」は、sensitive(敏感、過敏、繊細)が由来とのこと。名前の通り、これまでのイメージは高感度での撮影に特化したシリーズというイメージがありました。しかし、このsシリーズ最新機は、高感度撮影にも強いのですが、それよりも動画特化型であると言えます。
この記事では、α7sⅢ(α7s3)の主な特徴や、旧機種との比較などを紹介したいと思います。
外観
画素を抑えて低ノイズ&広いダイナミックレンジ
新開発の裏面照射型CMOSセンサーを搭載。有効画素数を約1210万画素に抑えることで、画素ピッチを広くとるアドバンテージを活かし、低ノイズで広いダイナミックレンジを実現したとのことです。
このアドバンテージを利用して常用感度は80〜102,400、拡張感度は静止画なら40〜409,600(動画は80〜409,600)へ拡大。またダイナミンクレンジは15ストップ以上を達成しているとのことです。
放熱処理により4K60Pで長時間撮影が可能に
4K撮影のような膨大なデータ処理は、画像処理エンジンやイメージセンサーなどがオーバーヒートしてしまう問題があります。ネットでもcanonのR5やR6の熱問題をよく聞きます。α7sⅢ(α7s3)は、この熱の発生を解析して放熱経路を最適化。そして熱伝導に優れたグラファイト素材を手ぶれ補正ユニットに組み込むことで、温度上昇の原因となるイメージセンサーからの発熱に対し、従来の5倍の放熱効果を得ることに成功したとのこと。これによって、4K60Pで1時間以上の動画撮影を可能にしたのです。
圧倒的なEVF
動画に対して本気度を剥き出しにしているα7sⅢ(α7s3)ですが、ファインダーの仕上がりを見たら、静止画に対してもバリバリ本気で向き合っているのがよく分かります。写真を楽しむ人にとってファインダーの出来は大切です。が、α7sⅢ(α7s3)は、944万ドットの超解像ファインダー。静止画撮影時のファインダーフレームレートは60fpsか120fpsから選択が可能。そしてファインダー倍率は世界最大の(2020年7月時点)0.9倍。ソニーのフラッグシップ機であるα9ⅡのEVFが約369万ドットでファインダー倍率0.78倍、キヤノンの超本気の最新機種R5で576万ドットファインダー倍率0.76倍なので、その本気度が伺えます。
刷新されたメニュー
「UIが悪すぎる」と定評価の声が多かったメニュー画面がついに刷新されました。ニコンのメニュー画面のようで、ニコンユーザーとしては親しみのあるメニュー配置のように感じました。
世界初のCFexpress Type Aメモリーカード(SDXCメモリーにも対応)したデュアルスロット
カードスロットはデュアルスロット搭載。しかも、それぞれがSDカードもCFexpress TypeAのどちらでも対応できるニクい仕様。4K動画の大きなデータ処理にも最適なCFexpressですが、お値段高めの次世代メディア。そこに一般的に普及しているSDカードもいける仕様にしているところにソニーさんの配慮が伺えます。
α7sⅡ(α7s2)・α7Ⅲ(α73)との比較
旧機種であるα7sⅡ(α7s2)、またα7Ⅲ(α73)との大まかな仕様を比較してみました。
機種名 | α7sⅡ | α7Ⅲ | α7sⅢ |
発売日 | 2015年10月16日 | 2018年3月23日 | 2020年10月9日 |
価格 | 約22万円 | 約20万円 | 41万円前後(税別) |
有効画素数 | 約1220万画素 | 約2420万画素 | 約1210万画素 |
常用ISO感度 | 100-102400 | 100-51200 | 80-102400 |
電子ファインダー | 236万ドット | 236万ドット | 944万ドット |
連続撮影速度(最高) | 5コマ/秒 | 10コマ/秒 | 10コマ/秒 |
AFフレーム | 169点 | 693点 | 759点 |
測距輝度範囲(EV) | -4〜20 | -3〜20 | -6~ 20 |
動画 | 4K30P | 4K30P | 4K120P |
撮影可能枚数 | 310枚 | 610枚 | 510枚 |
瞳AF | ○ | ○ | ○ |
ボディ内手ぶれ補正 | ○ | ○ | ○ |
メディアスロット | SDXC(UHS-Ⅱ)×2 | SDXC(UHS-Ⅱ)×2 | SDXC(UHS-Ⅱ)(CFexpress typeA)×2 |
背面ディスプレイ | 123万ドットチルト | 92万ドットチルト | 123万ドットバリアングル |
タッチパネル | × | ○ | ○ |
寸法 | 126.9×95.7×60.3mm | 127×95.6×73.7mm | 129×96.9×80.8mm |
重さ(本体のみ) | 584g | 565g | 614g |
まとめ:価格差と性能で旧機種を狙うのもアリ!
今回取り上げた機能の他にも、
- 新たにHEIFフォーマットでも記録可能。
- AF機能は、リアルタイム瞳AF、リアルタイムトラッキング対応。
- 測距点は位相差759点に拡張(コントラスト425点)。
- 4K 120p、16ビットRAW出力(HDMI接続した外部レコーダー使用時。120pには非対応)10ビットの4:2:2 Intraに対応。
- HDR対応のピクチャープロファイルはVT.2020カラースペースに対応するHLGを搭載。
- 録画ボタンは上面シャッターボタン近くに配置。C1ボタンは背面ファインダーわきに移動。
- 手ブレ補正効果は5.5段分。動画記録時はα初のアクティブモードも選択可能。
- 背面モニターは横開きのバリアングル機構を採用。3.0型・約144万ドット。
- カメラ前面には「可視光+IRセンサー」を搭載、蛍光灯やLEDのような人工光源下でもより正確なホワイトバランスが得られる。
- 通信機能は5GHz/2.4GHz対応の無線LANと、USB端子経由の有線LAN、Bluetoothに対応。
- 撮影可能枚数はEVFで約510枚、背面モニターで約600枚(α7S IIはEVFで310枚)。
- USB充電、USB給電が可能。αシリーズとして初のUSB PDに対応。
- 対応するACアダプターやモバイルバッテリーから従来比3~4倍の電力で給電・充電可能。
と、様々な規格変更や新たな機能があります。
これだけのスペックとUIをひっさげた正統なsの後継機で、この価格は妥当、いや少し安いとさえ言えるんじゃないでしょうか。トータル的にみて非常に魅力的なカメラに仕上がっていると思います。
ただし、上の表を見てもらえば分かる通り、α7sⅡ(α7s2)、α7Ⅲ(α73)との価格差はほぼ2倍。この価格差をどう見るかというところがポイント。つまり、静止画メインならばα7Ⅲ(α73)もまだまだ人気絶頂の機種ですし、趣味程度ならばα7sⅡ(α7s2)でも十分な動画性能があるので、これからの値下がりにも期待ができます。α7sⅢでなければならない理由に倍のコストをかけられるか、というところ。そのあたりをよく見極めて、判断したいものです。でも、4K120Pの動画撮影や、EVFスペックは、冷静な判断を失わせるほど、悪魔的な魅力がありますね。
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