最近のカメラ業界でもっとも話題騒然となったのは、Nikonから発売されたZ9でしょう。
一眼レフカメラ時代はキヤノンと対をなす二大横綱メーカーだったNikonですが、ミラーレスカメラ全盛の昨今、苦渋を舐めている状態が続いていました。そこに来て、このZ9の登場には「ついにニコンが息を吹き返した」「ここにきて他社を凌駕するカメラが出せるとは、さすがニコン!」と誰もが思ったことでしょう。
そんなZ9がどうすごいのか、同じような価格帯のソニーα1、キャノンR3と比較したいと思います。
ニコンZ9、キャノンR3、ソニーα1の主な仕様比較表
| Z9 | R3 | α1 | |
| 有効画素数 | 4571万画素 | 2410万画素 | 5010万画素 | 
| 手ぶれ補正 | 6段 | 8段 | 5.5段 | 
| 記録メディア | CFexpress B (XQD)×2 | CFexpress B×1 SD UHS-Ⅱ×1 | CFexpress A×2 SD UHS-Ⅱ×2 | 
| 常用(拡張)ISO感度 
 | 64-25600 | 100-102400 | 100-32000 | 
| AF測距点 | 493点 | 1053点 | 759点 | 
| 測距輝度範囲 | -8.5〜19EV (F1.2 ISO:100) | -7.5〜20EV (F1.2 ISO:100) | -4〜20EV (F2.0) | 
| 電子シャッター速度 | 1/32000〜30秒 | 1/64000〜30秒 | 1/32000〜30秒 | 
| ファインダー解像度 | 約369万ドット | 約576万ドット | 約940万ドット | 
| ファインダーフレームレート | 60fps | 120fps | 240fps | 
| モニター解像度 | 約210万ドット | 約415万ドット | 約144万ドット | 
| 可動方式 | 4軸チルト | バリアングル | チルト | 
| 動画 | 8K30p (60pに対応予定) | 6K60p | 8K30p | 
| 撮影可能枚数 | 740枚(EVF) 770枚(LCD) | 620枚(EVF) 860枚(LCD) | 430枚(EVF) 530枚(LCD) | 
| ボディサイズ (幅×高さ×奥行) | 149×149.5×90.5mm | 150×142.6×87.2mm | 128.9×96.9×80.8mm | 
| 質量(メディア・バッテリー込) | 1340g | 1015g | 737g | 
| 発売日 | 2021年内予定 | 2021年11月27日 | 2021年3月 | 
| 実売価格 | ¥628,650 | ¥673,200 | ¥766,523 | 
数値では表現できないファインダー性能
Z9はファインダー解像度約369万ドット、60fpsと、数値でみれば他2機種と比べて劣っているどころか、アマチュアクラスのラインナップのものと変わらないものです。しかし、実際にZ9のEVFを体験した人たちの感想から「Z9の性能で最も驚いたのがファインダーの見やすさだ」「これまでのEVFの中で一番良い」という意見が多く見られ、良い意味で驚いた人が多いようです。
メカシャッターを廃止したZ9
Z9はメカシャッターそのものを搭載していません。そもそも他社がメカシャッターを採用し続ける理由は、電子シャッターは、高速で動くものを撮影すると「グニャッ」と歪んでしまうローリングシャッター現象が発生してしまうからです。しかし、Z9は世界最速のスキャンレートによって、ローリングシャッター現象をほぼ克服し、メカシャッターレスを成立させました。これによって1/8000秒というメカシャッターの限界に縛られることがなくなり、またシャッターユニットの耐久性という問題も克服しています。
ニコンによると開発当初からメカシャッターレスを決めていたのではなく、開発途中で「この性能ならメカシャッターをなくしても問題ない」と判断した結果だということで、自信を持ったメカシャッター廃止と言えます。
ちなみに、最近他のカメラでは、レンズ脱着の際にセンサーにゴミが付着するのを防止するため、レンズを外すとシャッター幕が降りる機能が付いているものがあります。Z9にも似たような機能がありますが、これはセンサーを守る専用シールド。繊細なセンサー幕を使うより安心な機能です。
8K30Pの実用的な動画撮影が可能
Z9では8K30pに対応。さらに来年には8K60pも可能になるファームアップが入る予定です。
しかも、8K30pでの長時間での撮影ができるとのこと。8Kでの長時間動画撮影はすでに可能な機種が存在しますが、オーバーヒートによる限界で、実用的ではないと問題になっていました。
ところがZ9は、8K30pで120分間回しても大丈夫とのこと。8Kでの実用的な撮影が可能だということがわかります。
バッテリーの大容量化で長時間撮影が可能に
ニコン公式HPでは、EVFを使用しての撮影で740枚、モニタービューでは770枚、動画撮影だと170分連続撮影可能と表記しています。これは他社上位機種と比べても遜色のないバッテリーライフですが、ニコンは以前よりバッテリーライフを少なめに表記するので、実際にはもっとバッテリー保ちが良いのだろうと予想します。
4軸チルトで縦撮影でも便利
Z9では、モニターの可動は4軸のチルト方式になりました。これは通常のチルトと違い、縦撮影の際にも上下に可動することが可能になります。ハイアングルやローアングルでの縦撮影でもモニタを確認しやすくなりました。
なにより価格が安い!
ここまで主だった性能を紹介しましたが、どれもα1やR3に勝るとも劣らない完成度の高さと言えます。さらにこの記事では紹介していませんが、実際に試用したカメラマンたちは一貫して「AFの動体認識の高さと撮影中もブラックアウトのないファインダーが素晴らしい」と言っていました。Z9は、実際に使ってみて分かる数字に見えない機能も優れているようです。
そんなZ9、まだ予約のみで発売されていませんが、明らかに数字で分かる強みの一つは、その価格設定。メカシャッターレスによるコストダウンもあってか、R3と比べて約5万円安い価格設定です。キャノンが満を辞して発表したR3の話題を掻っ攫い、予想を超える予約が殺到して、ニコンのミラーレス業界での巻き返しを予感させたZ9は、この価格設定こそが、Fマウントや他社からのマウント移行を進めるダメ押しとなっているように思えます。
とはいえボディ単体で60万円を越えるカメラは、これまではシビアな撮影が求められる一握りのプロのためのカメラという印象だったのではないかと思います。本来ニッチなニーズなはずのNikonのフラッグシップ機がこれだけ業界を騒がせたのは、「古豪ニコンここにあり」という強いニコンが復活の狼煙をあげたのをみんなが認めたのではないかと、ニコンユーザーの私は感じざるを得ません。
そして、今後このフラッグシップ機からのノウハウが普及機に活かされていくことを考えると、ミラーレス一眼の三つ巴戦国時代がアツくなる予感がして楽しみですね!







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